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2006年7月31日 (月)

祖母を見送る

はらりと、ページがひとつ、確かにめくられた気がした。

 29日の土曜日の朝、父から電話があり、祖母が病室で息を引き取ったことを知った。90歳だった。心不全という診断だったが、体全体が弱り、肺炎を併発したりもしていたので、老衰ということだろう。
 翌日大阪に戻り、祖父母宅の仏壇のある居間に顔を出すと、方々から集まってきた親類に囲まれて、祖母の亡骸が横たわっていた。実家にいた頃、居間を覗くとたいがい、ここにばあちゃんがいて、何かしら菓子を勧めてくれた。ちょっと古くなっていたり、湿気ていたりするのだけれど。隣接する実家とは違う、ゆっくりとした空気が、ここには流れていて、ぼんやり座っているだけでほっとするのだった。ここ数年、目に見えて年老いてきていたので、気持ちの準備をする時間は十分にあったのだけど、それでも別れは急だった。
 やがて葬儀場のスタッフが祖母を引き取りに来て、あとは通夜、告別式、荼毘の儀、精進上げ、骨上げ、初七日法要と、慌ただしく二日が過ぎた。出棺間際、父が挨拶で言った、長いあいだありがとうございました、というひと言には、父や彼のきょうだいが人生で重ねてきたあらゆる思いが詰まっている気がした。深く頭を垂れる父の姿が、そのとき少年のように見えた。

 親類が大勢集まって賑やかなか、寂しさをにじませてじっと座っているじいちゃんが気になって仕方がなかった。
 別れ際にぽつり、じいちゃんが、心臓の弁がねえ、うまく動かないんだよ。朝にねえ、(となりの)ベッドがまっすぐなのを見て、ああ、今日も(病院から)帰ってこれなかったのだなあ、って思うんだよ、とつぶやくように言った。そうやって待っているじいちゃんの元に、ばあちゃんはそのまま帰ってくることができなかった。そんなじいちゃんのかなしみを埋めることなど、ぼくにはとうていできない。

 ばあちゃん、お疲れさま、ありがとう、ぼくらはばあちゃんへの想いを胸にしまってちゃんと暮らしてゆくから、どうぞ安らかに。じいちゃんを見守って、ときどき声を掛けてあげて。

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