祖母を見舞う
先月の末から体調を崩して入院しているばあちゃんを見舞いに、大阪に帰った。
ずっとそのままでいるように感じていたじいちゃんもばあちゃんも、ここ数年はめっきり年老いてきて、会う度に頼りなげになってくるようだった。
実家から歩いて10分足らずの病院へも、じいちゃんの足ではもう歩いてゆくことができず、ぼくが車いすを押して行った。病室に着くとじいちゃんは、杖を手に取ってゆっくりと立ち上がり、静かにドアを開けた。
父からそれほど危険な状態でもない、と聞いていたので気軽に見舞いに行ったのだが、5月の連休には自分で動き回っていたばあちゃんが、すっかり小さくなってベッドに横たわり、苦しげな表情を浮かべて肩で息をしながら眠っていた。
じいちゃんはまっすぐばあちゃんに近づき、ばあちゃんの手を取ってじっと顔を覗き込んでいる。顔を寄せて、何も言わずばあちゃんの頬に触れる。寡黙なじいちゃんは、今日も何も言わないのだけれど、ばあちゃんをいたわる気持ちが打ち寄せるように伝わってくる。
たぶんもう、ふたりでどこかに出かけるということもないし、ふたりで成し遂げねばならない仕事ももうない。ここに辿り着いたふたりの人生は、おそらくもう、どこへ向かうこともなく、ゆっくりと終わりのときに近づいてゆくのだろう。けれどそれゆえになお純粋に、じいちゃんとばあちゃんのいのちは寄り添うのだろう。
一時間近くもそうしてから、背を向けるまぎわ、うっすらと目を開いたばあちゃんに、じいちゃんがようやく、
じゃあ、ちょっと帰ってくるから、と言った。
ふたりの時間が、優しいひかりに包まれますように。安らかに日々をかさねてゆけますように。
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